薬剤分類FDA 勧告* 特徴・副作用催奇 形性使用中の授乳 添付文書*2 妊婦授乳 フロセミド 利尿薬C(D) 子宮胎盤循環低下 胎児脱水なし恐らく可能 2 1 スピロノラクトン利尿薬C(D) 女性化作用の可能性なし恐らく可能 2 1 クロロサイアザイド利尿薬C(D) 血小板減少 溶血性貧血なし可能2 1 ジゴキシンジギタリスC 徐脈,LBWI なし可能2 ニトログリセリン硝酸薬B 使用報告少ないなし恐らく可能2 1 硝酸イソソルビド硝酸薬C 使用報告少ないなし恐らく可能2 1 カルベジロールβ遮断薬C→D IUGR,徐脈,低血糖なし潜在的毒性1 1 メトプロロールβ遮断薬C→D IUGR,徐脈,低血糖なし潜在的毒性1 1 ヒドララジン末梢血管拡張薬C 頭痛,新生児血小板減少なし恐らく可能2 1 カプトプリル*3 アンジオテンシン 変換酵素阻害薬*3 C→D 胎児腎形成障害,腎不全, 羊水過小あり*3 可能1 1 エナラプリル*3 アンジオテンシン 変換酵素阻害薬*3 C→D 胎児腎形成障害,腎不全, 羊水過小あり*3 恐らく可能1 1 カンデサルタン*4 アンジオテンシン 受容体拮抗薬*4 C→D 胎児腎形成障害,腎不全, ロサルタン*4 羊水過小あり*4 恐らく可能1 1 ミルリノンPDEⅢ阻害薬C 使用報告少ないなし恐らく可能2 1 アムリノンPDEⅢ阻害薬C 使用報告少ないなし恐らく可能1 1 オルプリノンPDEⅢ阻害薬使用報告少ない1 1 カルペリチドhANP 使用報告少ない2 1 ドパミンカテコラミンC 使用報告少ないなし恐らく可能2 ドブタミンカテコラミンB 使用報告少ないなし恐らく可能2 イソプロテレノールカテコラミンC 使用報告少ないなし恐らく可能2
カテゴリー米食品医薬品局基準 A ヒトの妊娠第1期(あるいはそれ以降)の女性の対照研究において,胎児への危険性が証明されず,胎児への障害の 可能性が低いもの B 動物の生殖研究では胎児への危険性は証明されていないが,ヒトの妊婦に対する対照研究が実施されていないもの. あるいは,動物の生殖研究では胎児への有害作用が証明されているが,ヒトの妊娠第1期の対照研究では胎児への有 害性が証明されず,妊娠中期以降の危険性が証明されていないもの C 動物の研究では胎児への有害作用(催奇形性,胎仔毒性)が証明されているが,ヒトの妊婦に対する対照研究が実施 されていないもの,あるいは,ヒト・動物ともに研究が実施されていないもの.潜在的な利益が胎児への潜在的な危 険性より大きい場合にのみ使用すること D ヒト胎児への危険性の確実な証拠が存在するが,その危険性にもかかわらず,特定の状況(例えば,生命が危険にさ らされている状況や重篤な疾病において,安全な薬剤が使用できないか無効な場合など)では,妊婦への使用による 利益の方が容認されるもの X 動物またはヒトでの研究で胎児異常が証明されるか,ヒトでの使用による胎児への危険性の証拠が存在し,使用によ る潜在的な利益よりも危険性の方が明らかに大きいもの.妊婦または妊娠する可能性がある女性には禁忌なもの
2 抗心不全治療
本項では,日本循環器学会による急性心不全治療ガイドライン(2006年改訂版) 377) ,および慢性心不全治療ガイドライン(2005年改訂版) 378) において,急性・慢性心不全の薬物療法として記載されている薬剤を中心に,動物発生毒性試験(以後,生殖試験),ヒトにおける催奇形性,胎児新生児への毒性,母乳への移行性などについて述べる.いずれの薬剤においても,抗心不全治療を目的とした妊婦への使用報告が少ないため,主に抗不整脈薬あるいは降圧薬として使用した際の副作用を記述している.心不全の母体(および胎児)の状態によっては,循環動態や薬効が変化する可能性があることを考慮する必要がある.また,比較的安全とされる薬剤を使用する場合であっても,継続する場合には,循環動態の評価や血中濃度の測定を行う必要がある(レベルB). 急性・慢性心不全治療薬の,妊娠中および授乳中の使用に関する注意点を,FDAの薬剤胎児危険度分類基準11) (表16) と,薬剤添付文書情報151) を参考にして,表42 に示す.添付情報で適応外または禁忌とされる薬剤を使用する場合は,十分な説明と同意を得ることが勧められる.
表16 米食品医薬品局(FDA)の薬剤胎児危険度分類(pregnancy category)
(文献11より訳出,改変)
表42 主な抗心不全薬の特徴(妊娠中および授乳中の使用)
hANP:ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド,IUGR:子宮内胎児発育不全,LBWI:低出生体重児,PDEⅢ阻害薬:ホスホジエス テラーゼⅢ阻害薬 注) 薬剤情報は“Drugs in Pregnancy and Lactation 8th edition(2008)”(文献11)に従った.空欄は記載の無い薬剤である. * B→D/C→D:妊娠第1期の使用はBまたはC分類だが,妊娠第2〜3期の使用はD分類となる. C(D):通常はC分類だが,妊娠高血圧に使用の場合はD分類となる *2 薬剤添付文書による,(妊産婦/授乳婦)への投与に関する情報,空欄は記載なし 1 禁 忌:妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと.また,投与中に妊娠が判明した場合には,ただち に投与を中止すること.授乳中の婦人に投与することを避け,やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること. 2 相対禁忌:治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合のみ投与.妊娠または妊娠している可能性のある婦人には投与し ないことが望ましい. *3 アンジオテンシン変換酵素阻害薬は催奇形性が報告されているため(文献11),妊娠第1期の投与にも厳重な注意が必要である *4 同様な作用機序のアンジオテンシン受容体拮抗薬も,催奇形性への注意が必要である. 【注意事項】 1) 妊婦への使用に際しては,適応・禁忌を確認すること 2) 適応外または禁忌とされる薬物を使用する場合は,十分な説明と同意を得ること
心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版) Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)