一般
1)母体適応
◦児頭骨盤不均衡
◦軟産道強靭
◦狭窄,瘢痕,骨盤内腫瘍により経腟分娩が困難なとき
◦子宮破裂の危険があるとき(前回帝王切開,子宮筋腫核
出術などの既往)
◦母体に危険が迫っているとき(重症妊娠高血圧症候群,
子癇,前置胎盤,常位胎盤早期剥離,心疾患,肺疾患,
腎疾患,肝疾患などの合併など)
◦試験分娩,吸引分娩,鉗子分娩によっても経腟分娩不可
能と考えられるとき
2)胎児適応
◦胎児機能不全
◦臍帯脱出
◦遷延横位,胎位・胎勢・回旋異常
◦胎児の未熟性が予測される骨盤位
母体心疾患
◦心機能低下
◦血圧変動がきっかけで循環動態が破綻しやすい場合
Marfan 症候群,有意な大動脈縮窄,大動脈弁狭窄,高
度肺動脈狭窄,Fontan術後(経腟分娩が可能なことも
あるが極めてまれ)
◦肺高血圧
◦コントロールが困難な不整脈
◦機械弁(抗凝固薬のコントロール不良)
◦チアノーゼを呈する場合
2 分娩法の選択
一般的に経腟分娩が推奨されるが,一部の例外的な症例では帝王切開術が選択される(表38).心疾患の中で帝王切開術の適応が明らかとされるものは,上行大動脈径の拡大を伴うMarfan症候群と,分娩前にワルファリンからヘパリンへのコントロール不良の機械弁装着の場合とされている2).その他のハイリスク群に属する場合でも帝王切開を考慮することがある358).また,術後の運動能力評価において,自覚的には日常生活に不便を感じないとされていても,実際に運動を行うと,ごく軽い運動でも支障が生じるということもあるため,分娩による負荷に対する心血管耐容能力を正しく判断することが重要である.これは心疾患の種類によらず,全般にわたり注意を要する.
産科処置としては,母体負荷を軽減するために,分娩第2期を短縮する目的で,吸引や鉗子分娩を行うこともある.中等度〜高度リスク群では,少なくとも分娩後72時間はモニター管理を行う必要がある.一般に,分娩後に元の安定した循環動態へ戻るまでに4 〜6週間かかる.
表38 帝王切開術の適応
心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)