リトドリン(β刺激薬)
重大: 肺水腫,急性心不全,無顆粒球症,低カリウム血症,横紋筋融解症
新生児: 心室中隔壁の肥厚,腸閉塞
その他: 頻脈,不整脈(母体および胎児),肝機能障害,血小板減少,振戦,高血糖,高アミラーゼ血症を伴う唾液腺腫脹,頭痛,
紅斑など
硫酸マグネシウム
重大: 肺水腫,呼吸不全,心ブロック,心停止,テタニー,筋マヒ,低血糖,顔面紅潮,体熱感,麻痺性イレウス,横紋筋融
解症
新生児: 骨の異常所見
(上腕骨近位側骨幹端に放射線透過性の横断像や皮質の皮薄化)
インドメタシン
重大: ショック,肝機能障害,腎不全,消化管出血,喘息,再生不良性貧血,溶血性貧血,皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson
症候群),羊水過少
胎児: 動脈管収縮,腎不全,腸穿孔
新生児: 壊死性腸炎
投与方法
  リトドリン(β刺激薬) 50μg/minから始め,10~20分おきに50μg/minずつ増量する
  テルブタリン(未承認) 10μg/minから始め,10分おきに5μg/minずつ増量する
  硫酸マグネシウム4gを30分かけて静注した後に,母体のマグネシウム血中濃度をモニターしながら,子宮収縮
が止まるまで2~4g/hrで投与する
  インドメタシン(未承認) 25~50mg座薬あるいは内服を6時間ごとに48時間まで
投与禁忌
  リトドリン(β刺激薬) コントロール不良の糖尿病,肺高血圧症
  硫酸マグネシウム低カルシウム血症,重症筋無力症,腎不全
  インドメタシン消化性潰瘍,血液疾患,肝腎機能不全,喘息,膵炎,直腸炎,産科出血
1 子宮収縮抑制
 妊娠37週未満の早産は,陣痛や破水から早産に至る自然早産,母体や胎児の適応で早産となる人工早産に分けられる.心疾患合併妊娠では後者が圧倒的に多いが,前者の場合もみられる.東京女子医科大学における10年間の検討では,心疾患合併妊娠における自然早産の頻度は3.4%(13/381)で,一般的な頻度と差がなかった.したがって,決してまれな合併症ではなく,切迫早産治療(tocolysis)が必要とされる.切迫早産治療の禁忌として,母体側の合併症(子癇あるいは重症の妊娠高血圧症候群,高血圧,心疾患,出血,甲状腺機能亢進症),胎児側の合併症[胎児死亡,致死的先天異常,羊膜炎,胎児機能不全(non-reassuring fetal status),子宮内胎児発育不全(intrauterine growth retardation:IUGR)]に加え,4cm以上の子宮口開大,推定体重2,500g以上,妊娠週数37週以上などが予想される場合などが挙げられる349).子宮収縮抑制薬の投与方法を表32に,主な副作用を表33に示す.短期間での切迫早産治療は有効とされているが,長期間での有効性については認められていない2)(レベルB).切迫早産治療の目的で子宮収縮抑制薬を心疾患合併妊婦に投与する場合には,頻脈性不整脈の既往があるかどうかを検討し,心房性・心室性期外収縮がみられる場合には,その頻度と重症度を考慮して,禁忌とするか心拍数モニターを装着するかなどの,注意深い管理下で使用するかどうかを判断する.
表33 各種子宮収縮抑制薬使用の際に注意すべき副作用
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表32 各種子宮収縮抑制薬の投与方法と禁忌
心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)