1)オキシトシンと共通するもの
◦過剰投与による過強陣痛
 (間欠期1分以内,発作90秒以上)
◦胎児機能不全および胎児死亡
◦子宮破裂
◦分娩後出血
◦不整脈,血圧変動
◦悪心・嘔吐 
2)プロスタグランジンの平滑筋刺激作用によるもの
◦腹痛,下痢(消化管刺激による)
◦咳,喘鳴,呼吸困難
 (気管支平滑筋の刺激による)
3)その他
◦動悸,頻脈
◦薬剤静脈投与中,注入部の静脈炎
絶対禁忌
◦全前置胎盤
◦常位胎盤早期剥離
◦児頭骨盤不均衡
◦切迫子宮破裂
◦胎児機能不全
◦過強陣痛
慎重投与
◦児頭骨盤不均衡や胎児機能不全の疑い
◦妊娠高血圧症候群
◦心・腎・血管障害症例
◦軟産道強靭症
◦多産婦
◦胎位異常
絶対禁忌
1)オキシトシンと共通するもの
◦全前置胎盤
◦常位胎盤早期剥離
◦児頭骨盤不均衡
◦切迫子宮破裂
◦胎児機能不全
◦過強陣痛
2)プロスタグランジンの平滑筋刺激作用によるもの
◦緑内障,眼圧亢進症例(PGE2,PGF2α)
◦喘息(PGF2α)
慎重投与
1)オキシトシンと共通するもの
◦児頭骨盤不均衡,胎児機能不全の疑い
◦胎位異常
◦軟産道強靭症
◦心障害症例
◦多産婦
2)その他
◦喘息の既往歴を伴う症例
◦悪心・嘔吐がある症例
2 子宮収縮促進
 陣痛誘発をする場合や微弱陣痛がみられる場合には,子宮収縮促進薬が使用される.現在では,安全性と有効性から,オキシトシンとプロスタグランジンが主に使用されている351).両薬剤ともに,子宮収縮のパターンが自然陣痛と類似している.

① オキシトシン

 オキシトシンによる子宮収縮パターンは,投与開始から内圧が高く,規則的な周期で子宮収縮が認められる.感受性は妊娠週数によって異なり,個人差も大きい.
薬剤感受性は,妊娠20〜30週より増し,34〜36週には変化なく,37週より再び増加する.投与時間が8〜10時間を超えると,感受性は低下し,投与量を増やしても有効陣痛を得られないことが多い.投与方法としては,点滴本体に薬剤を入れて行う点滴静注法や,注入ポンプを使用する持続静脈注入法が行われているが,後者の方が安全性は高い.前者を選択する場合は,注入速度および陣痛発作の頻回な確認が必要である.分娩促進中には,分娩監視装置を使用し,医師や助産師の母児観察が必須である.特にオキシトシンの場合は,効果が現れる投与開始直後3 〜5分から,効果が安定するまで40分間かかる.このため,オキシトシン増量後の40分は過強陣痛に注意する352)-355)

 過強陣痛を予防するため,投与は少量より開始し,ゆっくり増量して有効陣痛に至るようにする.1 〜2mIU/minより開始し,安全限界である20mIU/min以内にとど
める.また,一日総投与量は,10IU以内にする.これは,オキシトシンには抗利尿作用があり,20mIU/min以上投与すると,腎クリアランスが著しく低下するためである.オキシトシンによる誘発分娩後に弛緩出血を起こすことがあり,分娩後の第4期もオキシトシンを引き続き使用するとよい.オキシトシンの副作用は表34に,オキシ
トシンの禁忌は表35に示す.

② プロスタグランジン

 プロスタグランジン(prostaglandin:PG)352)は不飽和脂肪酸の一種であり,大きく9 種類に分けられる.そのうち,子宮収縮作用を有するのはE1,E2,F2 αである.妊娠中は羊膜や子宮筋などで生産され,子宮筋に作用する.半減期は短く,調節性がある.PGFは妊娠末期に使用されると,投与開始直後は不規則で,内圧が低く,持続が1〜1.5分と長い.その後次第に作用持続時間が短縮し,内圧が低いままでも分娩は進行する.分娩直前には規則正しい収縮となり,自然陣痛の子宮収縮パターンと似た陣痛となる.プロスタグランジン使用中に,胎児頻脈が認められることがあるが,中止すれば回復する.プロスタグランジンは個体による感受性の差が少ない.頸管未熟例でも有効で,陣痛誘発の作用以外に頸管熟化作用を有する.プロスタグランジンは,糖尿病や妊娠高血圧症候群に使用可能である.

 PGFの投与方法は,点滴静注法または持続静注法が行われている.過強陣痛を予防するため,オキシトシンと同様に,投与は少量より開始す.0.5〜2.0μg/min
より開始し,安全限界である25μg/min以内にとどめる.25μg/min以上では,過強陣痛の頻度が上昇し,副作用(下痢・嘔吐・咳など)が出現しやすい.投与中の管理についてはオキシトシンに準ずる.また,オキシトシンとの同時投与は著明な過強陣痛のリスクのため避ける必要がある.PGE2は経口投与で使用する.欧米では腟座薬やゲルの腟内,頸管内投与が行われているが,我が国では承認されていない.

 PGE2は子宮収縮作用と頸管未熟例の頸管熟化作用が期待できる.通常1クールは1回1錠,1時間おきで,計4 〜6錠投与となっている.効果が認められないときは
翌日以降の再投与となる.他の薬剤誘発法と同様に,分娩監視装置を使用の上,医師と助産師による母児観察が必要である.PGE2錠は調節性に乏しいため,陣痛誘発効果が認められれば,投与を中止して,経過観察する.プロスタグランジンの副作用は表36に,プロスタグランジンの禁忌は表37に示す.
表35 オキシトシンの禁忌
表36 プロスタグランジン(PG)の副作用
表37 プロスタグランジン(PG)の禁忌
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表34 オキシトシンの副作用
心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)