1 Eisenmenger症候群(「先天性心疾患」-「チアノーゼ残存例」「肺高血圧症」参照)
 経皮的動脈血酸素飽和度が80〜85%以下は妊娠が継続しない.妊娠初期の胎内死亡となり,流産となる.一般にヒトの流産は20%位あると考えられ,その半数は
胎芽の染色体異常である.この場合の胎芽死亡の時期は,胎芽の心拍動が観察される以前であるが,経皮的動脈血酸素飽和度が80〜85%以下での胎芽・胎児死亡では,一度心拍が認められてから後の死亡であることが多い.

 妊娠が継続しても,胎児は子宮内発育不全を呈する.子宮内胎児発育不全は,児の生活環境が悪いことを意味し, 高度になると胎児機能不全(non-reassuring fetal status)から胎児死亡に至る.

 安静と酸素投与は有効と考えられ,妊娠を継続する場合は妊娠全期間の入院管理とする.

 妊娠の末期まで妊娠の継続が可能なことはまずなく,妊娠30週前後で何らかの症状が発現し,帝王切開,早産,低出生体重児出生の結果になる.心疾患合併妊娠の管理で,新生児集中治療室が必要な理由がここにある.妊娠の継続を中止しなければならない理由は,肺出血,心不全,低酸素血症の進行,胎児機能不全などである.
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)