3 診断
 周産期の心筋虚血や心筋梗塞は,典型的な胸痛,心電図検査,心臓超音波検査などにより診断される.胸痛,呼吸困難,嘔気などの症状は,正常妊婦でもしばしば自覚する症状であるため,虚血性心疾患が念頭にない場合は,診断が遅れることとなる.また,診断に際して妊娠による母体変化も考慮に入れる必要がある.心電図でⅢ誘導のQ波,T波陰転化,V1誘導でのR/S比の増大などは,正常妊婦でも認められることがある.血液生化学検査においては,正常分娩でも,ミオグロビン,CK,CK-MBは出産30分後に正常値の2倍に上昇するため,心筋梗塞の生化学的診断にはトロポニンを測定する330).心臓核医学検査や心臓カテーテル検査は,母体・胎児へのリスクより有用性が勝ると判断されたときにのみ施行する.
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)