1. 肺動脈性肺高血圧症:( pulmonary arterial hypertension:
PAH)
   1.1 特発性PAH
   1.2 遺伝性PAH
     1.2.1 BMPR2
     1.2.2  ALK1,endoglin(遺伝性出血性毛細血管
拡張症合併の有無は問わず)
     1.2.3 原因不明
   1.3 薬剤/毒物
   1.4 関連疾患
   1.4.1 結合組織病
   1.4.2 HIV 感染
   1.4.3 門脈圧亢進症
   1.4.4 先天性心疾患
   1.4.5 住血吸虫症
   1.4.6 慢性溶血性貧血
   1.5 新生児遷延性肺高血圧症
1`. 肺静脈閉塞性疾患/肺毛細血管腫症
2. 左心系疾患による肺高血圧症
   2.1 収縮能障害
   2.2 拡張能障害
   2.3 弁膜症
3.  肺疾患および/または低酸素血症による肺高血圧症
   3.1 慢性閉塞性肺疾患
   3.2 間質性肺疾患
   3.3 拘束性─閉塞性の混合型を示すその他の肺疾患
   3.4 睡眠呼吸障害
   3.5 肺胞低換気症
   3.6 高地慢性曝露
   3.7 成長障害
4. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症
5. 原因不明の複合的要因による肺高血圧症
   5.1 血液疾患:骨髄増殖性疾患,摘脾
   5.2  全身性疾患:サルコイドーシス,肺ランゲルハ
ンス細胞組織球症:リンパ脈管筋腫症,神経線
維腫症,血管炎
   5.3 代謝疾患:糖原病,Gaucher 病,甲状腺疾患
   5.4  その他:腫瘍,線維性縦隔洞炎,透析中の慢性
腎不全
(文献220より引用)
1 概要
 肺動脈平均圧が25mmHg以上の状態を肺高血圧という.肺高血圧症は種々の原因で肺高血圧が持続している病態である.肺高血圧症例は,病態の進展とともに,右心不全,低酸素血症,喀血,不整脈など種々の合併症を併発し,予後は極めて不良な場合が多い.表21に最近用いられている肺高血圧症の臨床分類を示す220).肺高血圧症臨床分類/第1 群の肺動脈性肺高血圧(pulmonary arterial hypertension:PAH)に属する症例には,特発性PAHや先天性心疾患に合併するPAHなどがあり,これらは若年女性に発症する頻度が高く,治療中の妊娠合併が問題となる.一方,第2〜4群の肺高血圧症は,好発年齢は中高齢であり,妊娠が問題となることは多くはない.

 正常の肺血管では,血管拡張(distension)や閉塞していた血管の再疎通(recruitment)などの機序により,肺血流量が増加しても肺動脈圧の上昇は軽減され,低圧系の肺循環動態は維持される.しかし種々の肺高血圧症では,もともと低圧系を維持する機序が破綻して肺高血圧を発症している.このため,妊娠によって循環血液量が著増すると(「妊娠・分娩の循環生理」参照),さらに肺動脈圧が上昇する.この結果,右心不全の悪化と換気血流比不均等の拡大が起こり,右左短絡が存在する先天性心疾患例では,短絡血流量の増加により,さらに高度の低酸素血症が生じる.肺高血圧症例における妊娠・出産のリスクは極めて高いことを銘記する必要がある.
表21  肺高血圧症を来たす疾患(2008 年:Dana Point第四回肺高血圧症国際シンポジウム)
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)