カテゴリー米食品医薬品局基準 A ヒトの妊娠第1期(あるいはそれ以降)の女性の対照研究において,胎児への危険性が証明されず,胎児への障害の 可能性が低いもの B 動物の生殖研究では胎児への危険性は証明されていないが,ヒトの妊婦に対する対照研究が実施されていないもの. あるいは,動物の生殖研究では胎児への有害作用が証明されているが,ヒトの妊娠第1期の対照研究では胎児への有 害性が証明されず,妊娠中期以降の危険性が証明されていないもの C 動物の研究では胎児への有害作用(催奇形性,胎仔毒性)が証明されているが,ヒトの妊婦に対する対照研究が実施 されていないもの,あるいは,ヒト・動物ともに研究が実施されていないもの.潜在的な利益が胎児への潜在的な危 険性より大きい場合にのみ使用すること D ヒト胎児への危険性の確実な証拠が存在するが,その危険性にもかかわらず,特定の状況(例えば,生命が危険にさ らされている状況や重篤な疾病において,安全な薬剤が使用できないか無効な場合など)では,妊婦への使用による 利益の方が容認されるもの X 動物またはヒトでの研究で胎児異常が証明されるか,ヒトでの使用による胎児への危険性の証拠が存在し,使用によ る潜在的な利益よりも危険性の方が明らかに大きいもの.妊婦または妊娠する可能性がある女性には禁忌なもの
3 薬物の胎児・新生児への危険性に関する情報
薬物の胎児・新生児への危険性に関する情報は,米食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)の薬剤胎児危険度分類(pregnancy category)が引用されることが多い11)(表16).妊娠中の使用に関して,X分類(胎児への危険性が証明されている)の薬物は絶対禁忌であり,D分類(胎児への危険性の証拠がある)の薬物は相対禁忌(極めて限定的な適応において使用が容認される)となっている.この分類を基に,妊娠中と授乳中の薬物使用のガイドブックが定期的に刊行されている.本ガイドラインにおける,薬剤胎児危険度分類,催奇形性,胎児毒性,新生児への影響などに関する情報の多くは,このガイドブックの第8版(2008年刊行)11)を参考とした.薬物の母乳中への分泌については,米国小児科学会からの勧告も参考とした150).なお,妊産婦や授乳婦への使用に関する医薬品の添付文書情報151)では,相対的または絶対的禁忌と記載されている薬物が多く,一般的な医療の実情やFDA勧告などとの解離がしばしば認められる.そこで,疾患の各論の薬物治療の表においては,医療用医薬品の添付文書情報151)の,「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項に記載された重要事項も併記して,注意を促すこととした.妊産婦や授乳婦への使用に関して,薬剤添付文書上は禁忌扱いとされるか,保険診療として認められていない場合には,本人や家族に対して十分な説明と同意を得る必要がある.