3 予後,治療
 妊娠中あるいは出産後早期の心内膜炎は,母体・胎児ともにリスクは高いと考えられるが,母体死亡率は非妊娠時と同様である45),134),139).心内膜炎は,先天性心疾患における母体死亡の主要原因の1つである140).抗生物質治療は,非妊娠時と同様に,起因菌の抗生物質感受性に応じて使用する141).妊娠中は,薬剤の胎児移行や催奇形性を考慮する必要がある45).連鎖球菌感染が多いため,起因菌不明の場合は,アンピシリン(8 〜10g/日を4〜6 回に分割投与)とゲンタマイシン(60mgあるいは1mg/kg/日を2〜3回に分割投与)の併用が推奨される(抗生物質の使用方法については,文献131,134を参照).ペニシリンは安全だが,ゲンタマイシンは,胎児に聴覚障害を生じる可能性があるため,2週間以内の投与とし,血中濃度を測定することが推奨される133),134)( レベルB).また,前期破水や感染兆候を認める場合は,敗血症に準じた抗生物質投与を行う.妊娠中の心内膜炎に対する心臓外科手術は,流産を生じやすいため,慎重な検討が必要である45)
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)