◦心房中隔欠損症(二次口型)
◦修復手術後6か月以上経過して,遺残短絡のない以下の疾
患(心室中隔欠損症,動脈管開存症,心房中隔欠損症)
◦冠動脈バイパス術後
◦僧帽弁逸脱症(逆流のないもの)
◦生理的あるいは機能的心雑音
◦川崎病またはリウマチ熱の既往(弁機能不全を伴わないも
の)
Class Ⅰ
特に重篤な感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く,予防
が必要であると考えられる心疾患
◦生体弁,同種弁を含む人工弁置換後
◦感染性心内膜炎の既往
◦複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(未手術,姑息術,修
復術後)
◦体肺短絡術後
Class Ⅱa
感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く,予防が必要であ
ると考えられる心疾患
◦多くの未修復先天性心疾患,術後遺残病変のある先天性
心疾患
◦後天性弁膜症
◦閉塞性肥大型心筋症
◦弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
Class Ⅱb
感染性心内膜炎を引き起こす可能性が必ずしも高いと証明さ
れていないが,予防を行う妥当性が否定できない心疾患
◦人工ペースメーカあるいは植込み型除細動器(ICD)植
込み術後
◦長期にわたる中心静脈カテーテル留置
1 概要
 感染性心内膜炎の発症には2 つの要因が関与する.心臓もしくは血管に感染しやすい部分があることと,菌血症を生ずる感染源の存在である.易感染病変は,高速血流のジェット衝撃の加わる部分,乱流,ずり速度の速い部分である.感染リスクのある心疾患は,日本循環器学会(2008年改訂),米国心臓協会(AHA,2007年改訂),欧州心臓病学会(ESC,2009年改訂)の感染性心内膜炎のガイドラインなどで広く報告されている131)-134).具体的には,心内膜炎の既往,チアノーゼ性先天性心疾患,大動脈肺動脈吻合術後,人工弁などの,合併症発生率や死亡率が高い疾患群である.一方,心室中隔欠損症や,僧帽弁逆流の合併した僧帽弁逸脱症などの,比較的軽症の疾患群は,AHAの最新のガイドライン(2007年改訂)以降は,感染性心内膜炎のハイリスク疾患から除外されることとなったが132),これらの疾患は,女性にも頻度が高く,心内膜炎発症後の死亡率は決して低くはない.そこで,日本循環器学会のガイドライン(2008年改訂)では,術後6か月以降の心房中隔欠損症や動脈管開存症などを除く,ほとんどの先天性心疾患を,感染性心内膜炎の予防措置の必要な疾患としている131)(レベルB)(表11).あえて感染性心内膜炎の予防のための抗菌薬投与が必要ないとされる心疾患を別の表に示す1)(表12).一方,菌血症の感染源は,泌尿生殖器,分娩,出産,血管内留置カテーテルあるいは外科手術である131) (レベルB).また,菌血症は,流産,会陰切開などを伴う経腟分娩,帝王切開などで起こる.
表11  歯口科手技に際して感染性心内膜炎の感染予防を必要とする心疾患
(文献131より引用改変)
表12  感染性心内膜炎の予防のための抗菌薬投与が不要とされる心疾患
(文献131より引用改変)
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)