2 血液学的変化
 妊娠前期から中期にかけて,赤血球容量の増加以上に循環血漿量が増加するため,ヘモグロビン値やヘマトクリット値が低下し,相対的貧血状態となる.腎臓でのエリスロポエチン産生亢進によって増加した赤血球は,より厚く球状に変化し,胎盤の通過に適した形態へと変化する21).白血球数は好中球を主体に増加し,平均9,000〜11,000/mm3 となり,妊娠末期には18,000/mm3程度まで上昇することがある.分娩時には平均13,000/mm3 である.血小板数は軽度減少することがあるが,正常値以下まで低下することはない.妊娠後期には,血漿フィブリノーゲン,von Willebrand因子, 第V,VⅡ,VⅢ,IX,X,XⅡ因子が増加し活性化される.このため,妊娠中は,血栓・塞栓症のリスクが高くなる21),22),37),38).このことは,血栓症のリスクのある患者や,血栓形成により重大な合併症(脳塞栓など)を起こすリスクのある患者では,特に注意が必要である.
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)