経腟分娩帝王切開術
麻酔
なし脊麻硬膜外
鎮痛鎮静薬脊麻硬膜外
麻酔脊硬麻全身
麻酔
他の
麻酔法
不整脈頻脈性不整脈
頻拍
上室頻拍○ ◎ ● ● ◎
心室頻拍◎ ◎ ○ ◎
先天性QT 延長症候群● ○ ◎ ● ◎ ◎
不整脈源性右室異形成○ ○ ●
細動と粗動
心房細動◎ ○
早期興奮症候群
WPW症候群◎ ● ◎ ● ●
徐脈性不整脈
洞徐脈・洞停止●
完全房室ブロック◎ ● ○ ●
人工ペースメーカ◎ ● ○ ● ●
虚血性心疾患狭心症○脊硬麻●
急性心筋梗塞◎ ○ ●
陳旧性心筋梗塞● ◎ ●
川崎病冠動脈障害○ ◎ ◎
先天性心疾患Eisenmenger 症候群● ◎持続脊麻● ● ◎
肺動脈弁狭窄症●持続脊麻
先天性右肺動脈欠損症○
三尖弁閉鎖症●持続脊麻
Fontan手術後● ○ ● ●持続脊麻● ◎
Ebstein病○ ● ● ◎
完全大血管転位症● ○
Mustard手術後● ● ○
大動脈縮窄症● ● ● ● ●
肺動脈弁閉鎖症+心室中隔欠損症●
肺動脈弁閉鎖症+正常心室中隔● ●
修正大血管転位症● ● ● ◎
両大血管右室起始症◎ ● ●
総動脈幹症●
冠動脈奇形● ●
単心室● ● ●
後天性弁膜症僧帽弁狭窄症◎ ◎ ◎
僧帽弁逆流症● ○ ● ○
大動脈弁狭窄症● ◎ ●
大動脈弁逆流症○ ●
僧帽弁狭窄+大動脈弁狭窄症● ●
僧帽弁狭窄+大動脈弁逆流症●
僧帽弁逆流+大動脈弁逆流症●
感染性心内膜炎● ○ ◎
心筋疾患心筋症
肥大型心筋症○ ◎ ◎ ○ ◎
拡張型心筋症○ ○ ○ ○ ◎
産褥心筋症○ ● ● ● ◎ 局所浸潤
大動脈疾患大動脈炎症候群(高安動脈炎) ● ● ◎ ●
先天性結合組織疾患に伴う血管病変Marfan症候群◎ ○ ◎ ● ◎
肺性心疾患肺動脈高血圧症(PAH) ● ● ◎ ● ◎
脊髄くも膜下麻酔硬膜外麻酔全身麻酔
誤嚥性肺炎リスクほとんどなしほとんどなしあり
交感神経遮断急激緩徐軽微
交感神経刺激なしなし挿管・抜管時
体血管抵抗低下低下浅麻酔で上昇
麻酔薬により低下
肺血管抵抗調節困難調節困難人工換気により調節可能
胸腔内圧不変不変調節呼吸で上昇
心収縮力不変不変抑制する可能性
経食道心臓超音波モニタリング苦痛苦痛容易
症状の訴え可能可能不可能
抗凝固療法中避ける避けるリスクは低い
5 帝王切開術における麻酔法選択
心疾患合併妊婦の帝王切開においては,個々の心疾患の病態を考慮して,最も安定した循環動態を提供できる方法を選択する.ある麻酔法が他の方法より優れているという証拠はない.通常は,麻酔範囲を徐々に広げていく硬膜外麻酔か,オピオイドを用いた全身麻酔が選択される(レベルC).
麻酔法選択に際して考慮すべき点を表39にまとめて示す.また個々の心疾患における,経腟分娩の鎮痛法や帝王切開術の麻酔法についての報告を表40に示す.
新生児がオピオイドなど麻酔薬の影響下に娩出されることを,あらかじめ新生児科医に伝え,分娩時のスタンバイと適切な対処のできる体制をとる.
児娩出後には,弛緩出血の予防と治療目的に子宮収縮促進薬をルーチンに投与することが多い.子宮収縮促進薬は平滑筋に作用し,様々な心血管系の副作用を持つため,選択に留意する(前項参照).オキシトシン10単位ボーラス静注では,5単位ボーラス静注と比較して血圧低下とST低下が有意に多く361),マレイン酸メチルエルゴメトリンと比較してもST低下が多かった362).したがって,最も循環動態に対する影響が少ない子宮収縮促進薬投与法として,オキシトシン持続静注が推奨される(レベルC).
表39 心疾患合併妊娠の帝王切開術の麻酔法選択に際して考慮すべき点
表40 基礎心疾患と麻酔法
心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)