避妊法一般的な使用理想的な使用
避妊なし85% 85%
性交中絶(腟外射精) 27% 4%
月経周期・禁欲法25% 1-9%
コンドーム15% 2%
ペッサリー16% 6%
経口避妊薬8% 0.3%
子宮内避妊用具0.1-0.8% 0.1-0.6%
卵管結紮術0.5% 0.5%
精管結紮術0.15% 0.1%
2 避妊法
 各避妊法を使用した場合の,1年後に妊娠する確率を表30に示した.一般に,避妊法を完璧に使用することは現実的でないため,一般的な使用法による推定妊娠
率を参照にされたい.我が国で最も使用されている避妊法はコンドーム法であり,90%以上との報告がある.避妊効果が高い経口避妊薬,子宮内避妊器具(intrauterine contraceptive device:IUD),避妊手術の使用割合は,2%未満と極めて低い.

① 卵管結紮術

 永久不妊術であり,確実である.再疎通術は困難なことが多い.手術のため,入院が必要となり,非妊娠時の施行は,既に子供のいる主婦には困難なことが多い.以下のように実施される.

1)帝王切開時の卵管結紮術
 最も簡単で確実な卵管結紮が可能である.術前に卵管結紮の方針は決定しておく.ただし,今回出生した児に障害がある場合や,転帰死亡の可能性が出生後にわかる場合もあるので,患者には十分な説明と同意が必要である.

2)経腟分娩後の卵管結紮術
 分娩翌日,もしくは2日後の実施が行いやすい.臍直下に10mm程度の横切開を加えることで可能である.分娩直後に行う理由は,子宮が大きく,臍直下の切開で卵管を直視下に見ることができるからである.開腹による感染のリスクもあるが,分娩に対する感染対策はとられているので,問題にはならない.麻酔は腰椎麻酔,硬膜外麻酔,全身麻酔のいずれでもよい.

3)腟式卵管結紮術
 子宮内掻爬による妊娠初期の人工妊娠中絶術に続いて,腟式に卵管結紮術が可能であるが,術者が経腟手術の習熟者であることが求められる.感染については,人工妊娠中絶術に対する感染対策はとられているので,問題にはならない.麻酔は腰椎麻酔,硬膜外麻酔,全身麻酔のいずれでもよい.

4)内視鏡下卵管結紮術
 分娩後,非妊娠時のいずれも,小切開で手術が可能である.気腹を行うので全身麻酔による管理が必要とされる.

②  子宮内避妊器具(Intrauterine contraceptive devices:IUD)

 手術操作は容易で,比較的安全な処置とされている.ただし,挿入時には迷走神経反射に注意する.抜去すれば再び妊娠が可能となる.器具が子宮体部に挿入されず,子宮頸部にとどまっている場合(挿入不全)があり,避妊不成功となることがある.また,排卵推定時期は他の方法との併用が望ましい.IUD挿入後は必ず超音波断層法で位置確認を行う.1年に1回交換する.あまり長期に交換せずに挿入した状態を続けると,抜去が困難になることがある.骨盤内感染症時には使用禁止である.

③ 低用量経口避妊薬

 
 避妊効果は高い.月経第5日目より服用を開始し,20日もしくは21日間服用を続ける.服用中止後2 〜3日で消退出血が始まる.その出血の第5日目から次のクールを開始する.血栓症,心不全のハイリスク群には安全性が確立していない.我が国では,心疾患に対する使用は未承認で保険適用がない.

④ コンドーム

 確実に正しく装着していれば,避妊効果は高い.パートナー任せになるので確実性がない.

⑤ 基礎体温

 本人の自覚のみに任せることになるので確実性はない.普通はコンドームとの併用を指導する.

⑥ パートナーの避妊手術(精管結紮術)

 心疾患の女性が死亡することもあり,男性パートナーの将来の生活を考えると積極的には勧められない.

表30 各種避妊法と1 年間の推定妊娠率
(日本産科婦人科学会編
「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(第2版)」
(2005年)より引用・改変)
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)