薬 剤分 類FDA
勧告特徴・副作用催奇形性使用中の授乳
添付文書*
妊婦授乳
ベラプロストプロスタサイクリンB 経口投与なし恐らく可能1 1
エポプロステノールプロスタサイクリンB 点滴静注なし恐らく可能2 1
ボセンタンエンドセリン受容体拮抗薬X
経口投与
肝障害不明*2 潜在的毒性1 2
シルデナフィルPDEⅢ阻害薬*3 経口投与
視覚異常2 1
4 肺高血圧症治療薬(表22)
 プロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)誘導体(ベラプロスト徐放錠:1 錠60μg,1 日2 回,食後,最大6錠まで):プロスタサイクリンは血管内皮で産生さ
れる生理活性物質で,強力な肺血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を有し,血管平滑筋増殖抑制作用も持つと考えられている.添付文書上は,妊婦または授乳婦への投与は禁忌とされている.

 エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン:1 錠62.5mg,1 日2 回,食後,最大4 錠まで):エンドセリンは血管内皮由来の強力な血管収縮物質で,血管平滑筋の増殖や炎症にも関与し,肺高血圧症の成立と進展に関連している.ボセンタンは エンドセリンの受容体への結合を阻害し,血管拡張作用を示す.動物実験において催奇形性を示し,妊婦または妊娠している可能性のある女性に対しては禁忌となっている.

 ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬(シルデナフィル:1 錠20mg,1 日3 回,食後):ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬は,cGMPの分解を阻害し,肺
動脈平滑筋の弛緩,肺動脈圧の低下作用を示す. 視覚異常(青視症・黄視症),四肢痛・筋痛などの副作用があるとされる.ニトログリセリン,硝酸イソソルビドな
どとの併用は禁忌である.

 エポプロステノール:エポプロステノールは化学合成されたプロスタサイクリンナトリウム塩で,最も強力な肺血管拡張作用を持つ.本薬剤は経口摂取が不可能であり,精密輸注ポンプを用いて,中心静脈を介した24時間の持続静注が必要である.投与量症例によって大きな差がある.本治療は肺高血圧症を専門とする施設で行われることが望ましい.
表22 肺高血圧治療薬の特徴(妊娠中および授乳中の使用)
注)薬剤情報は“Drugs in Pregnancy and Lactation 8th edition(2008)”(文献11)に従った(空欄は記載のない薬剤).
*薬剤添付文書による,(妊産婦/授乳婦)への投与に関する情報.
 1 禁    忌:妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと.また,投与中に妊娠が判明した場合には,ただち
           に投与を中止すること.授乳中の婦人に投与することを避け,やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること
 2 相対禁忌:治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合のみ投与すること.妊娠または妊娠している可能性のある婦人に
          は投与しないことが望ましい.妊娠中の投与に対する安全性は確立されていない
*2 ボセンタンは動物実験で催奇形性を報告されているが,ヒトでの使用においては不明である
*3 ホスホジエステラーゼⅢ阻害薬
【注意事項】
1)妊婦への使用に際しては,適応・禁忌を確認すること.
2)適応外または禁忌とされる薬物を使用する場合は,十分な説明と同意を得ること.
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心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Indication and Management of Pregnancy and Delivery in Women with Heart Disease (JCS 2010)